いじめの原因は?
いじめの原因を1つに特定するのは難しいですが、文部科学省の調査によると、いじめが起こりやすい環境は、主に「子どもにとってストレスの多い環境」というデータがあります。
不満やストレスが多い環境は、それだけで子どもを攻撃的にしてしまい、我慢が苦手な子どもや、誰かに認めてもらいたいと思っている子どもは、そのはけ口を他者へと向けてしまいます。それが八つ当たりや怒りによる自己防衛、他者を貶めて自尊感情を維持すること、注目を集めたいという感情がいじめを行ってしまう原動力になります。いじめの加害者は、いじめの対象となった子どもには無関係で身勝手な理由で、遊びや快楽を目的としたいじめをしたり、家庭内で生じたストレスを攻撃しやすい相手に対してぶつけることがあります。
「いじめっ子 VS. いじめられっ子」だけではない構造
昨今では、動作が遅いとか性格がおとなしいといった子どもばかりではなく,あらゆる子どもが「いじめ」の対象となっています。また、「いじめ」の実態として,1人を複数がいじめる傾向にあることから、「いじめ」の首謀者が誰であるかハッキリしておらず、「いじめ」を行う側の子どもが罪の意識を感じていない例が多く存在します。更に、「いじめ」に実際に加担していなくとも、「いじめ」の行為を面白がって見ていたり,はやしたてたりする「観衆」や、それらを見て見ぬふりをしている「傍観者」という子どもの集団が存在しています。観衆や傍観者の子供たちは、加害者に同調しなければ次のターゲットにされるなどの強迫観念からいじめに加害者になってしまうことがあります。これが集団でいじめが起きる原因となっています。特に、IT社会の進展により、子どもたちが自分用のパソコン・携帯電話・スマートフォンを持つことが多くなり、その結果として、ネットいじめ(英語ではCyberbullyingと言います)も現代のいじめの大きな特徴です。
いじめの種類
文部科学省では次のようにいじめを定義しています:
「個々の行為が「いじめ」に当たるか否かの判断は、表面的・形式的に行うことなく、いじめられた児童生徒の立場に立って行うものとする。【いじめ】とは、「当該児童生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的、物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの。」とする。なお、起こった場所は学校の内外を問わない。
つまり、周囲がいじめじゃないと思っていても本人が苦しんでいて「いじめだ」と認識していたらそれはいじめだよ、という解釈です。
ちなみにここでの「一定の人間関係のある者」とは、学校の中だけの話ではなく、仲間や集団(グループ)など、当該児童生徒(=いじめを訴える立場の子)がなんらかの関わりをもっている人たちのことです。だから部活動やクラスだけでなく、学校外での人間関係も含まれます。
近年のいじめの形態として,身体への直接攻撃のように暴力によって肉体的な苦痛を与えるもの以外にも、暴言を吐いて言葉で攻撃するものや、仲間はずれ・無視(シカト)・相手が嫌がることをしたりさせたりするなどの心理的ダメージを与えるものがあります。また、インターネットの掲示板やサイトへの匿名性を利用した個人を攻撃する書き込みを行うようなネットいじめも存在します。
いじめられているかも?:見逃したくない兆候
いじめられている子供は、いじめの被害を親になかなか言いません。意外なことかもしれませんが、親のことを尊敬すればするほど、親のことが大好きならばなおさら、子供たちは「自分がいじめられている」ということを親には言いません。そこには、親に心配をかけたくないという気持ちが働くのです。また、子供たちの中には、まだ「いじめられていることは恥ずかしい」という気持ちがあり、それを親にいうことはプライドが許さないという側面もあります。
ですから、子供が何も言わなくとも、以下のような兆候が感じられたら、いじめに遭っている可能性を疑ってみましょう。
- 持ち物をよくなくす→隠されたり、壊されたりしている可能性
- ぼんやりとしていることが多い→いじめのことを考えて不安
- 親の前で携帯メールを見なくなる→ネットいじめの可能性
- 友達から電話があっても出たがらない→加害者を避けている可能性
- 教科書やノートに本人の字でない落書きがある→悪口を書かれている可能性
- 他の人との違いに敏感になる→個人的な理由でいじめられている可能性
- 家族にきつくあたる→いじめのストレスをぶつけている可能性
- 服が破れていたり、汚してくる→暴力を受けている可能性
- 月曜日の朝に体調不良を訴えることが多い→学校に行くのが辛くなっている可能性
- 金遣いが荒くなる→恐喝にあっている可能性
- 家族と出かけるのを嫌がる→家族の前で加害者に会いたくないと思っている可能性
- 容姿を極端に気にする→容姿についてからかわれている可能性
- 急にお金をほしがる
- 擦り傷や打撲がある
- 頭痛などを訴え、学校に行きたがらなくなる
子供がいじめられている場合の対処法
子供がすでにいじめに遭っている場合、親は次のことを行うべきだと、ノバキッドの心理専門家、アナ・グプタはアドバイスします。
ー子供の話を率直に聞き、冷静に話す。
まず、自分の子供がいじめにあっているとわかったときには親は冷静になりましょう。とても驚き感情的になってしまうことは理解できますが、感情的に行動してもいじめの解決にはつながりません。そして、親は子供の「絶対的な味方」であり、何があっても「守る」ということを伝えましょう。いじめの理由を探ろうとせず、親の目標は、子供に自分のせいではないと説得することであり、子供を信じることです。
ー担任の先生と話す。問題を説明し、問題解決のための今後のステップを話し合う。
この時も重要なのは感情的にならないことです。そのための1つの対策として、いじめを「見える化」して文書にまとめることをおすすめします。文書にすることで、後々「言った、言わない」のトラブルを防ぐことになります。
具体的に、子供に
- 「いつ」
- 「どこで」
- 「誰に」
- 「どんなふうに」いじめられたのか
そしてその結果
- 「どんな気持ちだったか」
- 「どんなことがおこったか」(傷や物が壊れた等)
をできるだけ詳細に聞き取り、メモ書きでいいので文書にしましょう。もし、傷が残っていたら写真をとるとか、暴行の跡が残っていたら受診をして「診断書」などをもらって証拠にしましょう。
ー警察に動いてもらう
おおげさかもしれませんが、警察に動いてもらうのもひとつの手段です。いじめはエスカレートすると犯罪行為になります。我が子の命に関わることです。命を守るほうが大切だと考えるようにしてください。
―悩み事を相談できるサービスを利用する
どうしたらいいのか悩んでしまうのは、子供も親も同じです。そんなときは、悩み事を相談できるサービスを利用しましょう。「文部科学省 24時間子供SOSダイヤル」では、いじめ問題やその他の子供のSOS全般に悩む子どもや保護者などが、電話で相談できるサービスです。都道府県及び指定都市教育委員会が夜間・休日を含めて24時間対応可能な相談体制を整備しています。
電話番号:0120-0-78310
子供がいじめの加害者の場合の対処法
自分の子供がいじめられているのと同じくらい、親にとってはショックなことです。自分の子供がいじめっ子だとわかった時、どうすればいいのでしょうか?ノバキッドの心理専門家、アナ・グプタはこうアドバイスします。
ー子供と率直に話し合う。
どうして攻撃してしまうのかその理由を理解しましょう。
ー子供に過度のプレッシャーを与えないこと。
子供のストレスのはけ口が他の子供への攻撃になっているかもしれません。
ー家庭で共感について教える。
相手の気持ちになって考えてみることの大切さを学ぶ良い機会です。いじめられたらどう感じるか、子どもと一緒に話してみましょう。
ー子供の生活環境を分析する。
通常、他人をいじめる傾向のある子どもは、大人からいじめられることが多いようです。
いじめられている子供の場合よりもいじめっ子の場合の方が親自身が自分たちの子供の接し方について振り返り、検証する必要が高いかもしれないので、心理的抵抗があるかもしれませんが、ぜひここは正念場と思って取り組んでください。
子供がいじめの「傍観者」、「観衆」の場合の対処法
(「遅れている人を見かけたら、その人と共に歩こう。無視されている人を見かけたら、その人を仲間に巻き込む方法を見つけよう。あなたは大切な存在だよ、と自分の価値を常に思い起こさせよう。たった一つの小さな行動が、相手にとっては大きな意味をもつからね。」Pinterest)
自分の子供がいじめっ子やいじめられっ子でなければ、問題ない・・・そう思っている人も多いのではないでしょうか?冒頭にも書きましたが、いじめは誰にでも起きます。自分の子供の周りでいじめがあることは子供の本当の幸せにはつながらず、むしろ有害です。
日頃から子供の学校の様子には耳を傾けましょう。何かあったら大人に相談すること、助けが必要な時には助けを求めることの大切さを子供には繰り返し伝えておきましょう。
共感することの大切さを教えましょう。いじめる側の気持ち、いじめられる側の気持ちについて客観的に話せることが「傍観者」の立場の場合は可能です。
いじめは子供の世界だけの問題ではありません。大人になってもあります。子供の時にどういじめと向き合うかが、その後の人生で試練に直面したときの大きな力になります。いじめのない世界を目指すにはどうすれば良いか、ぜひ親子で話し合う機会をもってみてください。
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