世界中の約15%の人が、文字の音読や読み書きがうまくできない学習障害をもつといわれています。学習障害は知的能力の低さや勉強不足が原因ではなく、脳機能の発達に問題があるとされています。そして、学習障害はあらゆる言語、国、背景の人々に見られますが、発症率は日本と海外では異なります。日本は、4~5%、英語圏では10~15%といわれています。英語圏が多い理由としては、日常生活で使用している音の数が英語圏の方が多く、表面化しやすいからだといわれています。しかし一方で、学習障害の子供たちは、いわゆる代償能力を持っていることが多く、アイデアをつなげるのが得意で、とても創造的で、枠にとらわれない考え方ができることも知られています。適切なサポートとモチベーションがあれば、ディスレクシアの子供も実りある学習ができます。この記事では、ノバキッドの教育コンテンツディレクターであるエイドリアン・ランドリーが考える学習障害の子供がのびのびと学習できる方法を紹介したいと思います。
ノバキッドは子供の好奇心や関心を育てる英語学習に力を入れるだけでなく、子供のウェルフェアやメンタルヘルスの問題について、私たちの意識を高めることを大切にしています。
学習障害とはどんな症状?3つのタイプ
日本の文部科学省は以下のように学習障害を定義しています。
「基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。」
また、子供の発達についての研究機関である、国立成育医療研究センターによると学習障害の初期症状は以下の3つのものが挙げられています。
①読字障害
- 幼児期には文字に興味がないし、覚えようとしない
- 文字を一つ一つ拾って読む(逐次読み)
- 語あるいは文節の途中で区切ってしまう
- 読んでいるところを確認するように指で押さえながら読む
- 文字間や行間を狭くするとさらに読みにくくなる
- 初期には音読よりも黙読が苦手である
- 一度、音読して内容理解ができると二回目の読みは比較的スムーズになる
- 文末などは適当に自分で変えて読んでしまう
- 本を読んでいるとすぐに疲れる(易疲労性)
②書字障害
- 促音(「がっこう」の「っ」)、撥音(「とんでもない」の「ん」)、二重母音(「おかあさん」の「かあ」)など特殊音節の誤りが多い
- 「わ」と「は」、「お」と「を」のように耳で聞くと同じ音(オン)の表記に誤りが多い
- 「め」と「ぬ」、「わ」と「ね」、「雷」と「雪」のように形態的に似ている文字の誤りが多い
- 画数の多い漢字に誤りが多い
③算数障害
- 簡単な計算問題が解けない
- 九九が覚えられない
- 図形が理解できない
- 文章問題で何を問われているのか分からない
- 自分で計算式を立てられない
- 数の大小が分からない
ここで注意したいことは、学習障害の場合、同じ診断名でも人それぞれ症状が異なることです。例えば、同じ学習障害だったとしても計算が得意、文章を読むことが得意、漢字を書くことが得意、計算が苦手、漢字の読み書きが苦手など、人によって様々なことが挙げられます。
学習障害の大人の特徴は?
また、学習障害は生まれつきの障害であるため、大人になってから発症することはありません。しかし、子供の頃に周囲に気づかれないまま大人になるケースもあります。「障害ではなく、苦手な分野だと思われていた」場合、仕事で困った経験をすることも。基本的には子供の学習障害と同じ特徴で、読み書きや計算をする上で困難を感じるという症状ですが、大人の場合は二次障害の発症につながる場合があります。すなわち、「苦手なことを周囲からからかわれて傷つく」「ミスが続いて落ち込む」などの状況が続いた場合、ストレスからうつ病や不安障害などを発症する可能性が考えられます。
ADHDと学習障害の違いは?
発達障害の中にはADHD(Attenthion Deficit Hyperactivity Disorder=注意欠陥多動性障害)というものがあります。集中できない、じっとしていられない、衝動的に行動するという特徴がADHDの特徴として挙げられます。
ADHDも学習障害も発達障害に含まれるものであり、ADHDは勉強以外も含む行動面の障害に対し、学習障害は知的な問題はないのに「読み」「書き」の障害が見られたり、計算・文章題・図形の理解などの算数の障害が見られたり、表現が苦手だったりする障害を指します。
学習障害の子供におすすめの学習法
学習障害を学習能力の「欠陥」とみなすのではなく、学習障害の子供たちが特性としてもつ探索能力や創造性の高さを伸ばす、以下の学習法をノバキッドは提案します。
オーディオブックの活用
もし学習障害の子供が本を読むのが難しく、読書を楽しめないのであれば、オーディオブックを聴くことで興味を持つようになるかもしれません。同時に、耳から聞くオーディオブックは、語彙を増やし、リスニングの理解力を高めるのに役立ちます。オーディオブックの活用は、子供がたとえ困難があっても、新しい言葉をより早く解読することを学ぶ機会につながります。
音楽の活用
学習障害の子供の特徴として、芸術的才能と創造性がしばしば挙げられます。イメージで考えることができる彼らの能力は、芸術の世界では真価を発揮し、この分野での成功に大きく貢献します。ある調査によると、米国の起業家を対象とした調査では、回答者の35%が学習障害をもっていたそうです。また、ロンドン芸術大学のカレッジのひとつであるセントラル・セント・マーチンズでは、大学準備期間にいる学生の75%が学習障害に関する何らかの症状を有しており、英国のロイヤル・カレッジ・オブ・アートでは学生の29%がディスレクシアを有すると自認しているそうです。
音楽のレッスンはこうした子供の長所を活かすだけでなく、音韻処理能力の発達にも寄与すると考えられます。多くの研究により、音声と音楽の処理は脳の同じ領域で行われることが確認されています。これらの領域は、音声の仕組み、音と記号、それらの複雑な組み合わせの対応関係の探索を担っています。
ちなみに、ノバキッドでは、子供たちに英語を教える際、「リーディング・スルー・フォニックス」という方法を用いています。これは、音と文字を一致させるのに役立つ教授法です。最初の段階で、子供たちは主な音を別々に学び、次に、単語の中の音を区別して別々の単語を読むことを学び、そして初めてフレーズ、文章、テキストを読むことを学びます。こうすることで、初めて学ぶ知らない単語でも最初から発音して読むことができるのです。
絵やイラストから学ぶ
学習障害の子供は、教科書の1章を一生懸命に何度も読んでも、その後、事実を一つも覚えていないことがあります。しかし、鉛筆を手に取り、単語や文章、あるいはマンガを描き、そのストーリーを全部伝えようとすると、情報はかなり具体的になってきます。
「絵を描くことで子供の連想力は100%発揮されます。子供は学習した内容を素早く記憶し、非常に長い時間覚えていられるのです」とエイドリアン・ランドリーは述べます。
宿題を用意するときは、鉛筆やクレヨン、フェルトペンの用意をおすすめします。絵を描いたり、工作をしたりして、学習内容に関連した何らかのイメージを作り出している間に、子どもは内容をよりよく理解し、記憶することができるからです。
コミュニケーションを重視した学習法
机に向かって教科書を読んだり、文字を書いたりするだけが勉強ではありません。先生と会話する、ネイティブスピーカーによる通訳なしの直接教授法は、学習障害のような認知能力の特殊な子供も含め、すべての子供にとって望ましいと言えます。
「相手の真似をする、ジェスチャーで表現する、イラストを使った英語学習は、生徒と教師の相互理解に役立ちます。母国語に翻訳されないままダイレクトに伝わる英語は、無意識のうちによく子供の脳に記憶されるようになります。」とランドリーはコメントしています。
以上、学習障害の一般的な症状とその特性をポジティブに伸ばす学習法のアイデアをお伝えしました。いかがでしたか?
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